‐MZsecond files‐19
【 追憶 】
−彼の事情−

つい先日のこと

今はもう記憶が定かではない
あまりに非現実的で自分を失いかけた
ただその日はなぜか1日怖く胸騒ぎに襲われていた
逃げなければ逃げなければ
そんな感覚がずっと胸の中を支配していた

外出先から帰ろうとコートを着て車へ向かった
しかし止めてあるはずの駐車場に車が無い
しばらく理解できなかった
? 確かここに止めたはず・・・
ここに来て確かここに止めて・・・必死に思い出そうと努力した
まてよ車・・乗ってきたっけ?
家に置いてきたかな
あ・・・そうか家に止めてあるんだ、ボケてるな俺

そのまま何事も無かったように家に向かう
「そう遠くはない」
そう思いながら歩き始めた

近道の寂れた裏道に入る
さらにちょっとした地下道を抜けようとした
地下道から見える出口は
セピア色の日暮れ時

すぐ先の
工場廃墟と古びた空家の壁と壁の間を抜けた
そこに、ちょっとした空き地がある
工場の庭?だったのか
その中にぽつんと一つ
ブランコがあった

何色だったか覚えていない

気が付くと子供が一人ブランコに乗っていた
男の子?
女の子?
横目にそのまま通りすぎた
そのまま道に出て振り返った
下を向いたままの
その子
顔が見えない

あっ
そうだ
そんなに暇じゃない
早く車に乗らなければ
義務意識が戻った

そして
自分の車庫に来た
・・・・無い
車はどこだ?
そこでやっと気がついた
「盗まれた!」
慌てて最初に止めたはずの所に戻ろうと思い引き返した

携帯・・
警察に電話しなきゃ
どこだ?携帯
そこの駐車場の責任は?
携帯
・・・携帯、
あっ あった
電話しようと思った時先ほどの空き地に来た
来た道を辿り
足早に空き地を横切る
・・・
はずだった。


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