‐MZsecond files‐19
【 追憶 】
−彼の事情−

焦る気持ちの中
ブランコに目をやった
まだそこにいた
男の子?
女の子?

横に母親らしき女性

何か
どこか不自然に感じた

どこが?

親子がブランコで
遊んでいるだけ
・・・?
揺れていない
ブランコが揺れてない
その場で動けなくなった
ブランコに乗っているのではなく
ブランコの上で二人が立っている
こちらを向いて
しかし顔は下を向いたまま
ぞっとした
しかし二人はそこから動かない
早く抜けよう
こんな事してる暇ない
早く行こう
早く

そう思いながら落ち着くため
車止め用の鉄ポールのガードに寄りかかり
タバコに火をつけた

ブランコの親子と同じ年頃の親子が
背後から
数人その空き地に入ってきた
良かった・・
人が来た
そう思って少し安心した

その集団は皆で輪になって楽しそうに遊びだした
するとブランコの親子がその輪に寄って行った
そして
その輪に入った

そこで初めて気が付いた
皆・・この世の者ではない!
やばい
これだけの集団で
これだけ集まる所は・・
霊道かっ・・
ここで亡くなったのかっ・・・

素人の護身法じゃ
とても勝ち目はない

その時
一人の母親が私に手招きをした

−行っちゃいけない−

そう思いながら少し近づいて見た
楽しそうに遊ぶその輪には一切会話が無い
さらに手招きをされた

そして
子供が来て私の手を引いた

あと1,2歩の所で抵抗した
集団の顔はまるでお願いするような悲しそうな顔をしていた
思わず言った
勇気を出して

君達の世界はここじゃない
自分が死んでいる事に早く気が付いてくれ
俺は帰らなきゃいけないんだ
死者は自分達の世界に戻れ
生きている者を道ずれにするな!
俺には守らなきゃならない家族がある


しかしまったく聞き入れない
よほどこの世に未練があるのか
また恨みがあるのか
集団で事故にでも遭ったのか
・・・・・
さらに2,3人が寄って来て
引っ張り出した
この輪に入れば2度と戻れなくなる気がした
そんな恐怖が・・

まずい!
集団で取り込むつもりか・・・



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