発光、そしてキノコ雲

それに取り付かれたのは小学生の時
向かいの家に4つ年上の「しんちゃん」というお兄さんがいて
その頃毎日遊びに行っていた
しんちゃんは近所でも有名な悪戯好きで、その悪戯は時に度を越える事もあった。
例えば猫を脱水機に入れて回したり、田んぼ止めてある人の家の車に向けて
稲の切り株をティーに見立てボールを置きゴルフのドライバーで打ち込んだり
俺はこっち、おまえはそっちと線路に綺麗に石を並べたり・・(これは後に大問題になり
全校集会で校長先生にどやされた)
私はいつも一緒にいてとばっちりも受けていた
しかししんちゃんが大好きで師匠と崇めていた。
そしてしんちゃんの影響で「それ」に取り付かれたのだ!
学校から帰ってきていつものようにしんちゃんの家に遊びに行った
するといきなり銃を向けららたのだ
そして撃たれた
 「パン!」
銃口から火花が見え、そして目に見えない反動と共に横から薬莢が飛び出し
床に落ち回転して止まった
  お〜! かっこいい〜!!
モデルガンとの出会いだった
刑事ものでしか見たことがなかった薬莢の飛び出るGUN
銀球鉄砲とは比べ様も無いそのリアルな造り!
その重さ!
そして何より本物と同じブローバックな動き!
感動した
駄目元で頼んで見た
「頂戴〜」
駄目だった・・・
通信販売で5000円で買ったと言う
しんちゃんが言うに「3000円のもあるからお金持ってくれば注文してやる」
その言葉は私に暗示をかけた
暗示にかかった私は何のためらいも無く親の財布から3000円を取った
そしてすぐしんちゃんの所に行きそこから電話で東京のMGCに注文をした
今でこそMGCやコクサイと言えば有名なモデルガンメーカーだ
そして初めて購入したのがウッズマン(ワイルドセブンで飛葉ちゃんが使っているもの)
薬莢に火薬のついたキャップを詰め装填し撃つ
火薬の反動でブローバックし次の薬莢が装填され連射が出来る仕組み。
そして歯止めが利かなくなり小学生にして12丁も揃えてしまった。
最初はGUNに満足していたが、ついに禁断の改造に手を染めるようになった。
中学生になったしんちゃんが切り出した
「学校の技術室に旋盤やドリルがあるから銃身くりぬいて見るか」
今は金属製のモデルガン全て改造拳銃防止の為、銃身の中心に
真鍮の棒が入っていて穴をあけようとしても
横にずれて行ってしまうようになっているが、当時はただの鉄だった。
彼は本当にやってしまった
万力で固定し見事にくり抜いた
ワクワクした、そして試し撃ちした
煙が銃口から真っ直ぐ抜けるように飛び出した
格好よかった、まるで本物の銃のように見えた
「本当は火を噴けばもっとかっこいいんだけどな・・」
しんちゃんのその一言が、その夜の悲劇につながった。
家に帰って来てからも頭から「火を噴く銃」という言葉が離れなかった
しんちゃんの銃は金属製だから銃身は鉄で埋まっていた
しかしABS製(強化プラスチック樹脂製)の俺の銃なら、元々銃身はインサート(穴の中に縦に一枚
埋め込まれている鉄板)があるものの穴は開いている・・・
どうすれば火を噴かせることができるか、夕食を食べながら一生懸命考えていた
そして思いついたのは、火薬を増やす事だった
部屋に戻りまず花火をばらしMGキャップと言うモデルガン用の火薬が付いたナイロンキャップ内
に、ばらした花火の火薬を詰め撃ってみた
しかしまったく変化無かった
MGキャップとはは直径7ミリほどの器状のナイロン製で底の中心に3〜4ミリの粒上の火薬が
貼り付けてあるもの。  ↓

擦ったり叩くなど外部からの圧力や衝撃で発火する
例えばマッチ、箱の擦る茶色部分を水でぬらし
マッチの棒の部分でしごいていると溶けてきて
茶色の水になる。
その茶色水をマッチの火薬部分に一回り塗りつけ
乾燥させると、壁や靴の裏で擦るだけで発火するのと同じ原理。
花火の火薬を入れれば、それだけ発火力が強くなると
考えたのだが甘かった。
キャップに入れても粒子状の花火の火薬はこぼれてしまうのだ
そこで、MGキャップを裏に向け上から鉛筆で押してみた
すると3,4ミリの固形火薬がポロッと取れた
それを別のMGキャップに入れわずかなセロテープで落ちないように貼りつけることに成功!
火薬が2つなら倍の威力のはず・・・早速撃ってみた
「ボン!」
今までの「パン」と違い重い音と共にわずかながら火を吹いた
しかも火花ではなくバーナーのような一瞬ではあるが青く噴出す火
「やった!!」
さらに火薬3つ、4つと増やすと共に、噴出す青い火も大きくなった。
とにかく面白かった。
しかし4度目の発火時、過去最長の10センチ程の青い火を噴いたが
その圧力に耐えられず銃身が割れた・・・・
壊れるより火を噴かせる事に喜びで一杯だった私は別の銃に変え続けた。
44マグナムの火噴きはダーティハリーになったよう。
そしてとどまる所を知らずエスカレートする
深夜、バンバン音を立てると近所迷惑になると思い、明日のために火薬をばらしておこうと机に座った
そしてスタンドライトだけの明かりの中、キャップを全て裏側にして机に並べ上から
鉛筆で押し出していた。
ポロッと取れるのもあれば、なかなか取れないのもあった
以外にシビアな火薬で、ちょっとした加減でパチンと発火してしてしまうことも多々ある
発火すれば予測不能な動きで飛び散るので怖かった
取れた火薬は名刺大の透明ケースの中にいれ集めた
1箱にMGキャップ確か48個程入っていたと思う。
2箱ばらしきり、3箱目に入った。
スタンドライトの元、数ミリの火薬に集中する事1時間前後・・
目も疲れ、3箱目の半分までばらした所でいいかげんやめようと思い
これで最後の1個にしようとポロッと取れた火薬をケースに入れた。
3,4ミリとは言え、120〜130発の剥き出し火薬となればかなりの量!
透明ケースを持ち上げ「よくここまで集めたな〜」と何気に左右にガサガサっと振った・・
  ボンッ!
何が起こったか分からなかった
音と共にものすごい光と熱さに襲われた
条件反射で仰け反った私の目の前に真ん丸いキノコ雲が出来ていた
それは放射上に中へ渦を巻きながら上に昇っていき天井に当たった後部屋中に広がった。
覚えているのは今まで嗅いだ事が無いような異様な匂いが鼻の中に残っていた事。
MGキャップの火薬には表面に緑色の繊維が張ってる
それは多分火薬に直接摩擦が加わらないようにする為のものなんだろう
しかしばらした火薬は火薬同士直接当たっていて、私が振ったことにより
発火した
持っていた透明ケースは底が完全に溶けて机の上に落ちていた
持っていた手は人差し指から親指まで真っ白になりやけどしていた
淵を持っていたから良かったものの底を持っていたら大やけどは間違いない
熱風を吸い込んだ鼻は異様な匂いが残り1週間ほど馬鹿になっていた。
プラスチックの溶けた匂いと火薬の混ざった匂いは当分部屋から抜けなかった
その日を境にMGキャップばらしはやめ、安全な花火ばらしへ移行した
そして懲りない私は爆弾(番外編bR)でようやく火薬分解を卒業する事になるのである


その後しんちゃんと「本物を撃ってみよう」という事になり・・・・

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