体験談V 心霊の世界
FILE 108【しょうたろう】 
黒くて足の太い猫だった
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同じ地区内に住む方が一匹の猫を連れてきた
どうしたの?と母が聞いた
我が家のお墓に箱があり、前日から気になっていたようで
覗くとその猫が入っていたと言う、つまり捨て猫だった。
小さくて黒くて毛が長くて、顔を上げられないほど弱っていた。
我が家のお墓に捨てられていたと言われればほうっておくわけにもいかず引き取る事になった。
名前は [ しょうたろう ]
ミルクを飲みながら日に日に元気になり、元々そう言う種類なのだろうが
とにかく体がでかい、足は太い、尻尾も立派でまるでトラをそのまま猫にしたような風格。

喧嘩も強く頼りになる一匹狼
そのくせ人懐っこく誰にでもすり寄る性格からかわいがられ、あちこちの家に
出入り自由の特権も与えられていた。
中には専用の器や寝床まで作ってくれている家まであった。
日々あちこち怪我をして帰ってきてはなめていた。
ある時頭から大量の血を流して帰ってきた
顔半分流血で固まったまま、母が拭いてやろうとすると痛いらしく顔を背ける
2,3日後腫れ上がり大きく膿がたまり目も半分しか開けられない状態になった
気になるらしく頻繁に手で頭をこすっていた
翌日見ると長い毛が固まっていた、爪で破けたらしく膿が一気に出たのだろう
腫れも少し収まりスッキリした顔をしていた

誰が見ても最初の一言は「でかい猫だな〜」
8キロを超える体重でのっしのっし歩く姿は猫とは思えない迫力
頭は掴むとソフトボールと同じ。
人とまったく同じで、上を向いて大の字で寝る
面白がって人がやるのではなく、自らそうして寝た。

ある朝、専用の柔らかい座布団の上で猫らしく丸まったまま冷たくなっていた
苦しそうな顔ではなく穏やかな寝顔だった
埋葬する時、他の2匹の猫が異様に興奮し離れようとしなかった
私達を威嚇し走り回った。

半年ほど経ったある日、お墓の山頂にある神社に行った、ご先祖様の地である。
手を合わせしばらく瞑想し下ろうと振り向きざま神社横から猫が走り寄ってくるのを視た
足元にすり寄りじゃれついたその姿はまぎれもなく「しょうたろう」だった。
笑顔で見つめ、そのまま好きにさせておいた
しばらくじゃれた後山に消えた。
それ以後二度と現れる事はなかった。
数年の命だったが多くの人にかわいがられた猫らしくない猫だった。


今回はちょっと昔話でした。