MZ second  
FILE 56【ベル】
遅いお昼だったが2時頃ある洋食レストランに入った
奥のテーブルに座り知り合いと2人でメニューを開く
店員さんがお水を出しながら注文を聞く
2人共肉料理とドリンクバーを頼んだ
ドリンクバーへ向かい私はコーヒーを入れ席に戻ろうと振り向いた時
人が座っていたと思っていた席がカラだった事に気がついた
別にこれと言って気にしなかったが確かに誰か座っていたよな〜と思いつつ。

席に戻り話をしていると、それぞれの席にある注文をお願いするときに押す
ベルが鳴った
「はい!」店員が押されたベルの席に向かう
それは私たちの隣の席で、私が誰か座っていたように感じたブース。
「あれ?」そう言いながら誰もいない席の前まで来た店員は苦笑いし戻って行った
まもなく私たちが注文した料理が運ばれて来た
料理をテーブルに並べている時またベルが鳴った
振り向きベルが押された番号掲示を見た店員がつぶやいた
「あれ? まただ・・・」
覗くと先ほどと同じ私たちの隣の誰もいない席
オーナーがその席のベルを確認に来た
ボタンを見たり押したりと壊れていないか調べしばらくし戻って行った
食事を終えて私たちは再度ドリンクバーへ。
飲み物を選びながらふとその席を見たが当たり前だが誰もいない・・・気配も無い。
席に戻りタバコに火をつけコーヒーに手を掛けた時
腰高の仕切りの隣にふと誰かいるように感じた
直後ベルが鳴った!
店員達はまたか・・・と言うような顔でオーナーの方を見る
そしてその時それがある人の想いである事が分かった
ここがとても気に入っていたのだろう、霊ではなく念と言うか残留思念のような
ものとでも言おうか。
病気で亡くなった方だと思うのだが、最後にもう一度来たかったという強い願い・思いが
未だに注文をしようとベルを鳴らしているのだろう
オーナーが私たちの席に来て「良くあるんですよね・・・」とお詫びた
「ここを気に入っていた方が来ているんじゃないですか?」と笑顔で言うと
まじめな顔でオーナーが答えた
「えっ!そうなんですか?実は霊と言うか人影を見たという店員がいるんですよ!
 お祓いとかしようかと考えているんですが」
「今度ベルが鳴ったらお水を一杯出して見たらどうですか?
生前とても気に入っていたようですので」そう言って店を後にした
それからベルは鳴らなくなったそうだ。
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気配りの出来る店員がいたり気さくなオーナーのいる店等人が気に入る店と言うのは
独特な雰囲気がある、物というより空間を包む雰囲気とでもいおうか。
良い感じは人の気持ちを明るくする、そしてその空気はその店のイメージになるのだろう。
大勢の笑い声の気は次に入る人へ伝わるのかもしれない

願いが通じた時は誰でも嬉しくて感謝の気持ちでいっぱいになるでしょう、誰もが。


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