MZ second  
FILE 31【タイミング】
 間一髪
     紙一重
表裏・明暗・光影、そしてそれらには必ず折り返しのポイントが存在する
そのポイントから一歩前にいるか後ろにいるかで答えは大きく違う
しかもその位置を自分で決める事が出来ないとしたら・・・
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開店当初からひいきにして頂いているお客さんがいる
私と同世代で話も合いとても真面目な男性で、どんな話も真剣に聞き
受け答えも紳士的な方である。
1年ほど前に転職し、今は食品関係の会社で管理職に就いている
その会社は年に一度東京にある本社へ1ヶ月ほど出張があるとかで
今年もしばらく東京の本社近くのホテルに泊まっていたという。
週に一度はこちらに戻って来ては週明けまた東京に向かう
そして一月経ち、長野に戻る事になった
支度をすませホテルを後に自分の車で練馬から関越自動車道に入る
2時間ちょっとで長野か・・・そう思いながら2車線の左側走行車線で
徐々にスピードを上げていった
やっと高速のスピードにも慣れた頃だったと言う
自分の車から数台先の中央分離帯の脇に何かが!
「なんだ? ・・工事か?」 そう思った時ふっと魔が襲った
その何かに無意識に向かったと言う
そして目の前まで来た時にハッ!と我に返った
中央分離帯スレスレで交わした時、右側追い越し車線を走っていたと言う
その時彼が見たのは・・・
茶色の服・グレーのズボン・黒い靴を履いた男性
その髪型から顔まではっきり認識できたと言う
そしてその男性は最初から最後まで手招きをしていたそうだ。
すぐにバックミラーで確認したがそこには誰もいなかったと言う・・・
彼は過去にそう言う体験をした事がなく、その話をしている時
未だかつて無い顔で話をしてくれた。
あまりにはっきり見た事にショックを受けながら何か自分に
良からぬ事が降りかからないかと心配そうに話していたが
彼の場合は心配なさそうだ。

少し違うが私にも理解できない体験がある
23の時、仕事の関係で国道19号を良く走っていた
当時まだ高速道路が無く松本に行くには19号を使わなければならずとても嫌だった
何故ならとにかく長い・・・
クネクネと山沿いでしかも道が狭い上、トラックが多いのである。
すれ違い時ミラー同士がぶつかり飛ばされるのであろう、道端には
ミラーやガラスの破片がちょくちょく転がっていた。
ある時松本から長野への帰り道、すでに深夜で時々トラックがすれ違う19号
トンネルを抜けた直後目の前を人が横切った
急ブレーキで止まった・・・ 危なかった〜 
注意しようと車を出たがそこには誰もいなかった
それから数日後また同じ所を走っていた
「そう言えばこの前のはこの辺だったな〜」そう思いながら通り過ぎ
その先のカーブの終わりにある路側帯に入った
車2台ほど入れる道路脇のスペースで、道路とはガードレールで仕切られていた
そこへ止め眠気から少し休憩をしようとシートを完全に倒し横になった。

 ・・・・・ どの位たったか突然激しいクラクションで飛び起きた!
目の前で聞こえたクラクションに驚きながらムクッと起き上がると1,2メートル前に
トラックらしきヘッドライトがこちらを照らしていた
あまりに眩しく目を開けられないほどで、邪魔なのか?と思い車を動かそうとシートを戻し
前を見て愕然とした
何と車は19号の2車線(本線と反対車線)をまたいで横向きに止まっていた
どうやってそこまで動きその向きになったのか全く理解できなかった。
2,3度切り返しやっと道に沿った。
これは本当に未だに分からない
そしてさらに一月ほど後またそこを通った
疲れからぼーっとしていたのは事実だがその時の記憶はあまり無い
覚えているのはまるで山積みの綿の上に飛び込んだようなやわらかい感触
気が付いた時にはハンドルを持ったまま本来あるべき助手席が見えず
その代わり銀色の壁が左腕に触っていた。
トラックに後ろから突っ込みそのままトラックの下に私の車が潜り込んだのだ
たまたまセンターラインに少し寄りながら突っ込んだので運転席は残ったのだ
トラックの荷台の右角が私の横まで来ていた
トラックの運転手は私は潰されていると思ったと言う
わずか40センチ程の空間で全く無傷だった私を見てトラック運転手は
ヘタヘタッと路肩に座った
実は横のガードレールの下は崖でダム?になっており
ぶつからなければ落ちていただろう・・・
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きっと誰でも一度は紙一重の経験があるはず
私の場合その紙一重分反対側に傾いていたら無事では済まなかっただろう・・・
とにかく「この道は嫌だ」と思う事からすでに始まっていたのかもしれない。
ただあれだけの事故なのにまるで綿に突っ込んで行った様な感じだったのは
今でも忘れない

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