MZ second  
FILE 21
【 if 】

もしその時正直に答えていたら・・
ちょっとした恐怖をあなたに。

平成4年 秋
関東地方のマンションに一人暮らししていた女性の体験

建設会社に勤めるOLで入社2年目のOさん
その日残業があったものの、それほど遅くならず終業しPM8:00頃会社を出た
人通りの多い町並みをよそに、駅に入る
夕食を食べていなかったが、疲れからか何も買わずにそのまま
電車に乗り込んだ
わりと込み合っていたが、相席する程ではなく
バッグを横にゆったりと一息ついた
前日友人と遅くまで飲んでいたので
目を閉じるとそのまま意識が遠のきそうになるのを
堪えていた

「次は○○ 次は○○でございます・・」

はっとしたOさんだったがそれは、自分の降りる駅だった
いつしか寝ていようだが、たった二駅の睡眠で嘘のようにすっきりしていた
改札を出てマンションまで3分ほど
メイン通りなので人通りも多いし、まだお店も開いているので
女性の一人歩きでも怖い思いをした事はない

レトルトのカレーが残っていたんだ、それを食べよう

そう思いながらマンションについた
8階建てのそのマンションは入り口にエレベーターがあり
5階に住んでいたOさんはエレベーターのスイッチを押した
表示は3階になっていて しばらくは3階から動かなかった
「あれ? どうしたのかな??」と思った頃降りはじめた
2階→1階  

チン!

開いた瞬間 隙間から人が見え、中から強引に開けるように
男性が飛び出してきた
そのまま正面にいたOさんにぶつかった
もちろん驚いたOさんは思わず「
きゃっ・・」と声をだし
その場にしりもちをついた
相手も驚いたようにOさんを見た
即振り向いたOさんが見たものは
深く帽子を被った男性だった
クリーム地のトレーナーに赤い血のようなものが付いていたように見えた・・・
何も言わずそのまま走り去った男性に腹を立てたOさんだったが
エレベーターが閉じそうになったので、慌てて起きて乗り込んだ
5階のスイッチを押して気が付いた
自分のブレザーに血が・・・・
そしてエレベーターの中にも所々血がついていた

やだ! なに?

怖くなった彼女は5階で降りすぐ部屋に入った
そしてブレザーを洗濯機に入れ必要以上の洗剤で回し始めた
その答えが分かったのは翌朝

ピンポ〜ン

誰だろう? こんな早くに・・・

そう思いながらドアを開けると制服姿の警察官
昨日このマンションで殺人事件がありまして、
何か見たりとか、聞いたりしていませんか?

何階でですか?
3階なんですけどね!
ドキッとした・・
しかしOさんは恐怖と後々面倒になるのが嫌で思わず
何も知りません
・・・と嘘をついた

そうですか・・・もし気がついたり思い出した事があったら
まだ私この辺りに居ますので連絡ください

そう言って警官は立ち去った
昨日の光景が頭の中をぐるぐる回った

エレベーターでぶつかった人が犯人? 
確か血も付いてたし・・・多分間違いない
どうしよう、顔も見られたし
でも私は相手の顔わからない・・・


そんな恐怖で会社に行く気もなくなりその日は休んだ
お昼のニュースでその事件も流れ始めた
マンションの周りには取材も多く部屋から出れなかった
昼過ぎになりまたチャイムが鳴った
出ると朝の警察官
たびたび申し訳ありません、何か気がついたことや
思い出した事あればと思って・・


どうしよう・・やっぱり話したほうが良いかもしれない
でも朝知らないって言っちゃったし今更・・・
疑われたりしたら冗談じゃない
何も知りません私!
結局嘘をつき通した。
ドアを閉め覗き穴から見ると
しばらくそのまま外に立ったままだった

もしかして私がその時間通ったのを知ってるのかも・・
帰ってきた時 殺されているなら・・
私疑われているの?

そんな不安に襲われた

翌日
犯人逮捕のニュースが流れた

”捕まったんだ・・・良かった〜”

部屋でニュースを見た彼女は直後に愕然とした
犯人の顔は
聞き込みに来たあの警察官だった・・・・・

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