MZ second  
FILE 10【未練】
管理人
文字通り、その場所や建物等を管理する人。
しかし新たな管理人がいるにもかかわらず、管理を続ける人もいる


今年の春、私は車を買いかえた
その後、買った車屋にちょくちょく遊びに行くようになりその都度
メンテや洗車など自由にさせてくれるようになった。
我侭を聞いてくれる車屋さんを作ると何かと助かるもので
暇が出来ると何もなくてもちょっと寄るようになった
今では奥の事務所に入り弁当を食べたりそこのパソコンで
ネットをして遊んでいる。
弁当と言ってもちゃんと自分の分とそこのスタッフ全員の分を
いつも私がおごっている(誤解の無いよう)
事は5月の中ごろだったか・・・
仕事が終わっていった時の事
いつものように店内に入りジュースを飲んでいた
洗車を終えた新入りのスタッフが来たのでジュースをおごり
話をしていた
何か・・・誰か外にいるように感じたが他のスタッフだろうと思い気にもしなかった。
その後30分ほど話をしていたが、なんか奥の事務所の窓が気になっていた。
その日を境に、そこの車屋に行くたびに何か・・誰かいるような気配を感じるようになった
実は、このミステリーゾーンを書き始めてからとても敏感になってきたと言うか
以前は嫌な予感や気配程度だったものが、姿や形をはっきり認識する事があるようになった。
いずれも一瞬の出来事が多いが、大半は顔だけが多い
もちろん全体像もあるが・・・
その車屋は見た感じより敷地が割りと広く、散策するには持って来いの宝島。
裏には、車好きなら端から漁りたくなるような物が山積み。
仕事終わりに行くのが習慣になり、いつも8,9時頃から深夜1,2時まで
遊んでいる。
5月の終わり、夜10時頃スタッフが一人で翌日納車の車を整備していた
私は隣で自分の車にワックスを一生懸命かけていた
そこは事務所の裏側で、作業場になっており
2人で話をしながら作業をしていた時、事務所のすぐ横を
誰かが歩いていた
あれ? と思い聞いて見た
「誰かまだ残ってるの?」
「えっ? いや、もう皆とっくに帰ったよ」
確かに誰か歩いていたのを私は見た
しかし、入り口はチェーンをかけ、さらに車を横着けしてるので誰も入ってはこれないはず。
その日、そのまま12時を過ぎたので2人とも帰った
6月に入り、また同じ2人で前回と同じ作業をした時
同じ場所でやはり人影があるのに気がついた。
私たちがいる所から反対側の事務所の向こう側に車の展示場があるのだが
展示場に入った2、3メートル辺り。
「やっぱ誰かいるよ」
「えっ! 本当ですか? 泥棒じゃないよね・・」
「・・・違うと思うよ・・」
その日はじめて以前から感じていた事を話した
「やめてくださいよ、毎日深夜までここで俺仕事してるんだから」
と言いながらも彼は今までここで体験した事を話した
彼は深夜遅くまで仕事して疲れたとき、事務所の机の上で泊まることが
あると言う。
たま〜に誰かに見られている様な気がする時があったり、突然の物音に
恐怖を覚える事がよくあると言う
「どんな人ですか?」と問われたので、見た感じを言った
「痩せ型で初老の男性って感じ、農家がよく着るような作業着見たいな服装
 あまり怖い感じはしなかったけど、あっちこっち動き回っている」
「いや〜、心あたりはないな〜」と車屋の彼。
屋根の上に石を落としたような音が響いた・・
   カン! カラカラ・・・
「おお・・なんかやだね」と顔を見合わせた時また
  カン! カラカラ カラッ ・・・
怖くなりその日は作業中断、慌てて2人共帰った
1週間ほど後、また夜遊びに行き裏の工場で洗車を始めた
その日彼は、徹夜してでも仕上げなければならないと言う車のエンジンを
ばらしていた。
あの日以来、怖くて夜の作業はしていなかったと言う
そして彼は思い出したように話し始めた
「実はあの後、ここの大家さんに聞いてみたんだけど、この車屋出来る前はここ
 魚の養殖場があったんだって、すごくでかい池だったんだって。
 その時 魚の餌くれしてたおじさんがそこに落ちて亡くなってるんだって」
「まじで? そう言えばなんか下見ながらあっちこっち動いていたよ・・・
 その人かもね、もしかしたら。」
そう言いながら私は洗車ガンでボンネットを洗い横そしてトランクに回ろうとした時
私の車の後ろをその初老の男性が
 ス〜ッ と横切った
「う〜わっ!!」 いきなりだったので驚いた。
「うん? どした??」
「・・・その・・・例のあれ、今ここ通ってったよ」
「 えええ・・・  やめてよ〜 ・・」
「ごめん、今日俺帰る」
「マジ?! そんな事聞いたら俺やだよ、一人!」
今日中に仕上げなければならない彼を一人残し私は車も拭かずに
そのまま車屋を出た。
今頃怖い思いしてるだろーな・・・ そう思いながら蒸し暑い夜のバイパスで家路を急ぐ
濡れた車の湿気からか車内の窓がうっすら曇ってきた
視界をさえぎる程ではないので気にもとめなかった
赤信号で止まる
フロントガラスの曇りの中に指で書いたような何かにふと気がついた
ハンドルを持ったままフロントガラスのバックミラー下辺りに寄ってみた
そこには 判で押したようにびっくりするほど整った「表情の無い顔」がくっきり浮き出ていた
鳥肌が全身を走った・・・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
多分そのおじさんは、未だに池が気になってそこにいるのだろうと思う。

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