-第35話- 【存在(後編)】
その夜のことは妻には言わなかった
なぜなら、最近2歳になる娘が変な行動を取るようになり、妻がその事を
気にして 心配しているからだ
ここ2,3ヶ月程前から娘は昼夜となく、天井や壁を指で指しながら
猫いるよ」 とか 「あー いた」 など、また寝ていてもわざわざ起こして
壁と天井の角近辺を指で指し「いた〜 おにーちゃん いたー」などと
頻繁に言うようになったのである
そして恐怖の1夜がやってきた
私が背中を突付かれた次の日 24日、夕食後少し横になり休憩
PM9:00ちょっと前に皆でお風呂に入りに行った
お風呂は隣りの両親が住んでいる家にあるので、毎日そっちに行くのである
息子と娘は大き目のタライにお湯を入れ、ボディーシャンプーを入れてかき回し
泡風呂にするのが好きで泡だらけで遊んでいた。
私自身、前日の恐怖はすっかり忘れていて、体を洗い終わった私は
先にお風呂を出た
息子はまだ遊んでいると言うので妻に任せ、娘を連れて先に2階に帰ってきた
ドライヤーで娘の髪の毛を乾かし、布団へ行き借りてきてあったアンパンマンの
ビデオでも見ようとTVをつけた
娘に  「アンパンマン見るか?」 と後ろにいた娘に聞いた
ところが、返事をしないのでもう一度聞いたが、立ったまま身動き1つしないのである
見ると、東側の壁の上の方を見たまま、瞬き1つしない・・・
 「世玲奈?」(娘の名)と呼びかけた直後 後ずさりしながら振り向き
私に抱きついてきた、そして 「こわいー  こわーい」 と泣き出した
「どうした? なにがこわい?」 と聞いたが とにかく 「怖い怖い」を繰り返すだけ
しがみついたまま離れずガタガタ震えている
ただ事ではない怖がり方に、昨日の出来事が脳裏をよぎった
「なにか居るのか?」 と聞くと 「いるの〜 いるの〜」と言う
「何処に居る?」と聞き返す
いるの〜 こわい いるの〜」と言いながら掴んでいた片手を離し東側の窓の上を指差した
指差しながらチラッとその方向を見た娘は、今度は  「や〜〜
と泣きながら私の後ろに回り込み、背中にしがみついた
そして、今度は南側を指差した
恐怖で顔が青ざめている、
「誰いるの? だれがいるの?」 聞いてみた
おいーたん」 それが”おにーちゃん”なのか”おじーちゃん”なのかは
分からないが、今度はまた私の前に回りこんで私の後ろを指差し
いるの、いるのー」と言う。
どうも部屋の中を移動しているのを、そのまま見ているらしい!
そして例の音が部屋に響き渡る
 「パキッ」
これには2人して ”ビクッ” となった
それで娘はまたおお泣き!
「パパ居るから大丈夫、大丈夫だよ!」と背中をポンポン叩きながらあやした
娘は最近覚えた怒り方 「めっ」 を連発!
その直後、 ”バン” とドアをあけて息子が部屋に入ってきた
それにまた驚いて娘おお泣き!!
その後帰ってきた妻に、娘は一生懸命説明
「いたの、おいーたんいたの」 と  そして説明しながら
また怖くなり泣き始める、深夜何回も泣いて起きるようになってしまった
今までは 見ても一緒に遊ぼうとさえする様子だったが、これだけ怖がると言うのは
よほど怖い容姿なのか、怖がらせたのか・・・
昨日の件と言い いずれにても、今までのとは明らかに違う相手である
第1話のピーク以来、ここ数年少なくなっていた現象が春先から頻繁に起こるように
なってきているのは感じている
慣れっこになっているとは言え、前日の件と言い 
段々身近に迫って来ているようで気にかかる・・・
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