-第32話- 【 浮浪者 】

20代半ばの頃、私は浮浪者をしていた時期がある
本意ではなかったが、当時住んでいたアパートをある団体の事務所として
開放し、日々大勢の人が出入りしていた
そのため、隣人や近所からの苦情が殺到し追い出されてしまったのだ
いくあても無く、そのまま長野市内のとある公園に行き、そのままそこを
ねぐらにしてしまう派目になった
そのときは人のために開放したのに、私独りが犠牲になったことに腹を立て
働く気力もなくなりなにもやる気が無いまま寝袋で生活していた
そんな時、かわいそうに思ったのか毎日朝と夜お弁当を作って
持ってきてくれるようになった女性が現れた。
毎朝決まった時間に現れタッパ-に詰めたお弁当を毎日毎日届けてくれた
 まぁ それはいいとして
公園自体はかなり広くグランドや散歩用の林などあり、
毎日かなりの人々が行き来していた
公園に来てから1ヶ月程してからのこと、寝るときは余り人気の無いところを
選んでグランド横のプールの裏に死角になる場所を見つけそこを縄張りにしていた
木々に囲まれ車1台丁度入るスペースがあり、少しでも用で離れると
別の人に取られてしまう格好のスペース!
その日は無事そこを押さえ、車を入れ寝袋を用意し早々寝ようと思っていました
夜なので当然暗いのですが、そう言う生活に慣れると夜目が利くようになり
深夜でも辺りが見えるんです
私の寝ている場所の後ろは車がやっと通れる位の細い道
裏路地なので夜は人がほとんどと通らないのですが
人が歩いてくる気配に、道に頭を向けて寝ていたので はじめは誰かきたのかな?
と振り向きもしなかったのですが、しばらく後 まだ何か居るような気配があり
おもむろに振り向いたのですが、誰も居ない
あれ?  おかしいな・・・
そう思いながら寝袋に包まっていました
その日何回もそんな気配を感じた物のいつしか寝てしまい朝日と共に目がさめました
それからそれは毎晩始まったのです。
決まって深夜、と言ってもそのつど時計を見たわけではないので正確ではないが
見える範囲の家々は明かりが消え車の往来も殆ど無い時間帯
足音が聞こえてくるのです。
しかしその度見ても誰も居ない  その繰り返し
公園ですので他に人が居ても不思議ではないのですが、しかしこんな夜中
しかも行き止まりの公園の果てで・・・
はじめは気にしていなかったのですが、そんな事が続くと段々薄気味悪くなってきて
ちょっとした音にも敏感に反応するようになっていきました
ある時気がついたのですが、フッと一瞬ですが影の様なものが行ったり来たり
している事に気がついたんです、影と言っても地面にではなく人間位の大きさで
それなりの固体を持っているようなのですが動きが早いのか、元々それだけの
存在なのか、とにかく表現方法とすれば影なんです
右に見えたと思えば左、上に見えたと思えばまた左右、
結局コレは最後まで何だかわかりませんでした
そんな生活が2ヶ月目に入った頃、いつものように深夜寝袋に入っていました
たぶんいつもの時間、やはり気配と共に足音が、怖いので寝袋を頭まで被っていた
のですがすき間がありそこから  そ〜っと 覗いてみたんです
何も居ませんように、誰も居ませんように そう願いながら・・・
私から4,5メートル先に垣根があるんですが そこに
男の子が 半ズボンで 立ってるんです
年恰好は5,6歳位の男の子
 「 うわ〜   勘弁してくれ〜 」
心の中でそう叫びながらさらに寝袋に潜り込みました
つまり毎日毎日 私の後ろに来ていたのは この男の子だったか?
そう考えると ぞ〜〜っとしました
しかしそれから足音が聞こえないと言うことは、まだそこにいるのか?
怖いが、見たい  見たいが怖い  頭の上で掴んでいた寝袋の口を
そーっと  そーっと 緩め覗いたら    いないんです
安心半分 恐怖半分  しかしそのまま寝袋を開ける気にならず又頭の上で
掴みなおした直後、私の右横で足音が・・・
 ペタ  ペタ  ペタ   ペタ  ・  ・  ・ ・ ・・・
頭の横から足元へ  そして遠ざかり消えて行きました
心臓バクバクで 身動き1つ取れない状態
そのまま恐怖で身動き1つ出来ずどの位たったか
たぶん3,40分程してから、話し声と足音が近付いてきました
直後、寝袋をポンポン と叩かれ 飛び上がるくらい驚いたわたしに
懐中電気を照らし、警察です と おまわりさんが2人
「なんでこんな所に寝てるんだ」 から始まり一通り職務質問を受け
立ち退くよう勧告された。
その時 時間を聞いたら2:50分、男の子が居たことを言うと
辺りを調べてくれたが見つからずじまい
おまわりさんが帰り際、「少し前に ここの近くで小学生が交通事故で無くなったんだ
 いつも学校帰り、この公園を近道で通ってたんだってさ」
         ・・・・・・・
今でも家に帰ろうと毎日毎日公園を行き来していると言うのか・・・
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その後は、場所を移し明るい所を選んでは寝ていた、
結局その公園に3ヶ月程程寝泊りしていた
お金も無い私は、手作りお弁当を毎日届けてくれたその女性のおかげで
生きいたと言っても過言ではない。
その後付き合うようになり、今 私の妻として毎日
美味しいご飯を作ってくれている。

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