-第29話- 【 妖刀 】
妖刀
その昔、徳川家を代々苦しめ 家康本人にも牙をむいた刀として
いつからかその名がついた文字どうり 妖気を宿した刀 
            「村正」
将軍家が嫌い、持つ者の身に災いをもたらすと言われ、事実
数多くの命を奪った太刀である
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刀と言うのは刀工が精魂込めて打ち出す魂のこもった刃であり
使い手次第でその生き方は変わる。
人の血を吸いすぎた刃は血を求め輝きを増し、その輝きに人はまた
惑わされると言われている
私の先祖は武田信玄の家臣であり、中堅でも名のある武家であったと聞いている
事実 我が家には100本以上の刀があり、大人でも抱え切れない程が保管されていた
しかし、家事で家が全焼した際、焼け跡から集められた刀のほとんどを
火事場泥棒に持っていかれてしまい、今現在は数本しか残っていない
代々刀を家宝にしている家はなぜか病気や災いが多く、何らかの理由で
手放した刀を所有した家もまた災いに見舞われることが良くある。
友人宅にも脇差しがあり、災難続きから親戚に譲ったところ
今度は親戚が災難に見舞われ、返しに来たと言う。
災いをもたらす太刀(太刀→釜刃/大刀→直線刃)はそう多くはないが
実際存在もする
こう言う話がある、
その太刀の所有者は過去全員死んでいると言ういわく付きの刀を、あるお坊さんが
供養と処分を目的に手に入れた
御祓い後、燃え盛る炎の中に投げ入れたが、灰の中からそのままの姿で出てきた
そこで今度は海に投げ入れた、 しばらくして海中から何かが 暴れながら表れ
陸に打ちあがった、見るとサメの頭にその刀が刺さっており、その場で息絶えた。
最後に折るしかないと岩の上にその刀を置き、斧を振り下ろした
その反動で跳ね返ったその刀は、お坊さんの体を貫き、お坊さんは亡くなった。
過去1度だけ妖刀と言われる太刀を抜いたことがある
初めて訪れた場所で本身の話になり、居た部屋から奥に通された
小さな窓しかなく少し薄暗く、4畳半程の畳の部屋で
正座をするよう言われ、その場で正座した
押入れからおもむろにそれを取り出し、向かいに正座してから布の紐を解き
中から刀を手早く取り出した
意外に綺麗な状態で 想像していた物とは違う印象
本人が1度抜きサヤにおさめ、手渡された
真剣は何度か抜いたことがあるが、緊張のなか抜いてみた
日本刀に変わりは無いが、刃全体が黒光している印象を受けた
仕事柄研いだ刃物の切れ味を指で測る癖があり、無意識に触ろうとした
「刃には触れるな」と注意を受けてしまった
その後本人が柄をばらし中の文字を見せてくれた
 刻み文字で  「村正」 と彫られていた
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村正は五郎入道正宗の弟子であったと言われている、
村正と言う人間は邪悪な性格の持ち主であったため、打つ刀も邪道な物が多い
家康の祖父清康が暗殺された時に使われたのが村正
父広忠が家来に刺されたのが村正の小刀
家康本人も不注意で手を切ったが それも村正
さらに信康が敵通の疑いをかけられ自害、その時介錯に使われたのもまた
村正であった
真田幸村をはじめ、家康と合戦した敵方の勇将知将の刀がすべて村正であった
と言われている
そのため村正を所持することは すなわち将軍家への逆心を意味すると言われ
家康本人が村正を天下の禁忌にしたと言われている。
ちなみにお坊さんの命を奪ったのも村正であったのは言うまでもない

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