第5章 悪い癖
その頃幸一の会社では、新規プロジェクトが始まった
そのプロジェクトの責任者に幸一が抜擢されたのだ
そしてアシスタントとして入社3年目の女性「真里」が補佐する事になった
プロジェクトを成功させる為、企画の段階から会議は白熱していた
会社もそのプロジェクトにかなりの投資を決定していた為 幸一の責任は重大だった
当然帰りも遅くなり、時には会社でそのまま朝を迎える事もあった
ユリもプロジェクトを任された事を喜び理解してくれていた
その生活が一ヶ月も続いた頃、幸一はある変化に気が付いた
それは周りの同僚も同じだった

「お前最近太ったな、と言うより前に戻ったって感じかな(笑」

確かに鏡で顔を見ると、以前の自分がそこにいた
空腹感もなくなっていた、そしてそれに反比例してユリの機嫌が悪くなるのを感じた
実は深夜まで会社に居る事が多くなってから、アシスタントの真里が
毎晩夜食のお弁当を作って持って来てくれるようになっていたのだ。
2人はあくまで仕事のパートナーであったが2ヶ月目に入る頃には
何となくお互い気になる存在になりつつあった
しかしプロジェクトを成功させるにはそう言う気持ちは禁物・・・と
2人にはなんとなく”暗黙の了解と言う境界線”が存在していた。
”惹かれながらも口にしてはいけない”もどかしさをお互い感じていた

プロジェクトも大詰めに差し掛かり、発表の日まで1週間を切った
その頃には会社に缶詰め状態になり幸一は殆ど家に帰らなかった
その日も真里が深夜お弁当を作って会社に持って来てくれた
すでに幸一は真里の手作り弁当を心待ちにさえしていた
「おおお!ありがとう、丁度お腹すいていたんだ!」
誰もいない会社の会議室、2人並んでお弁当を食べ始める
よほどお腹が空いていたのか、幸一の食べっぷりに思わず真里は笑ってしまった
食べ終わる頃真里はコーヒーを入れ幸一の前に置いた
「今度2人だけで飲みに行きませんか?」と彼女
ユリの顔が頭に浮かぶ幸一だったが悪い癖が顔を出した
「・・・・そうだな、行こうか」それは暗黙の了解が崩れた瞬間だった

直後 幸一の携帯が鳴った 着信名はユリ!
後ろめたい気持ちのまま幸一は電話に出た
        「もしもし・・・・」

        「・・・・あなたが悪いのよ」
同時に鈍い音が会議室に響いた
驚いてふり向くとそこには 瞬きせず口を半開きの真里
「ど・・・どうした?」声をかけるが反応の無い真里

「ふふふふっ・・・」携帯からは笑い声が響いていた

                  Back<<<Top>>>Next