第3章 つかの間の幸せ
「何処の会社」幸一は聞いた
「小さな問屋だから言っても聞いたこと無いと思う」
「そうか・・・・ 」それ以上言葉が出てこなくなりしばらく会話が途切れた

彼女はビールを飲むことなく、泡だけが消えて行った

突然ユリが思わぬことを口にした
「幸一さんのアパートに・・・しばらく泊めてもらえない?」
「ええっ
驚いた、まさかそんな事言われるなんて夢にも考えていなかった
しかし一瞬まんざらでもない気がした
一度は同棲もしてみたい願望があったからだ
そのまま同棲って事も ユリちゃんとなら(嬉しい誤算とはことの事か
そして冷静を装い答えた
「今住んでいる所はどうするの? 俺の所来てもいいけどダイニングと寝室しかないから
 狭いかも・・・・あっでもそれでもよければ別に構わないけど」

狭いと言いながらすでに2人で生活している絵が浮かんでいた
「会社の社宅を借りていたの、でもやめちゃったから出ないと・・・」
「そうか・・・ いつまでに出るの?」
「今日出てきちゃった」
「今日!」

そしてその夜からユリとの同棲が始まった
荷物は何も無かった、ユリ曰く「新しい自分になる為全て捨ててきた」
普段着る物はとりあえず幸一の服を着ていた
しかし幸一は自分の服を着ているユリがまた可愛く見えた。
一通り2人分の生活雑貨をそろえた、ソファー・食器・歯ブラシ
そして会社の帰り道、雑貨屋に寄りおそろいのマグカップを買った幸一は
その日が恵の初七日だった事など全く忘れていた。

会社でも笑顔の耐えない幸一に周りは「何か良い事でもあったのか?」と聞かれる程
しかし幸一はユリとの同棲の事は言わなかった、やはり元彼女の事があったからだ
毎日ユリはご飯を作ってくれた、新婚気分だった
ある日留守番電話のメッセージを入れたいとユリが言うので入れさせた
録音ボタンを押しゼスチャーで早く喋れと促した

は〜い!幸一で〜す、今いませ〜んごめんちゃい!
また電話してね〜っ キャハハッ
−録音終わり。

「おい〜こんなんじゃフザけ過ぎだよ〜」(大笑
「ありきたりなメッセージじゃつまんないじゃない」
そう言ってそれが留守電のメッセージになってしまった。
休日は映画を見にいったり、買い物に出かけた
ユリは小食で、外では食べ物を口にしなかった。
別に痩せている訳でもなく幸一はそれほど気にしなかった

仕事柄幸一はお昼を外食する事が多かった
その日も同僚と3人で近くの蕎麦屋に入った
ざる蕎麦1人前では満腹にならずもう一人前、それも大盛りを追加した幸一に同僚が言った
「平泉、最近良く食べるよな! 大食感だったっけ」
「そうか〜? なんか最近腹へるんだよね、成長期かな」と笑った
「それにしては少し痩せたように見えるけど・・・」
幸一はそんな言葉気にもしなかった


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