第2章 涙の罠 
「とりあえず何か飲みますか?」
「お任せします」
幸一はカクテルを2つ頼んだ
「自己紹介でもしましょうか」
「そうね、私ユリ!黒澤ユリ」
「そうなんだ、ユリさんて言うんだ  俺は平泉幸一26歳ですよろしく」

緊張と興奮を隠しながら会話を交わす幸一はカクテルを一気に飲み干し
追加注文を入れる
ユリはカクテルをじっと見つめ「綺麗・・・」とつぶやいた
時折見せるユリの涼しげな笑みに幸一は惹かれた
「よければ連絡先教えて」と幸一
「うん、・・・あっでも今日私携帯家に忘れてきちゃった」
そう言いながら番号を教えあった
そして週末このバーで再開の約束をし別れた
バーを出た後幸一の姿を後ろからユリは立ち尽くし見ていた
その顔はそれまでの明るい表情ではなく・・・まるで別人のようだった

翌日幸一は明るかった、タイプだと言われ突然可愛い女性に声をかけられた
言うなれば逆ナンパ! 男としてはまず同僚や友人に自慢したい所だが・・・
しかし幸一は誰にも言わなかった、いや言えなかった。
元彼女の通夜の直後に逆ナンとは言え女と酒を飲んだなんて知れたら
ひどい奴だと思われるだろう
周りには彼女を支えたやさしい男でいたかったからだ

まさか亡くなってくれたおかげで正直ホッとしているなんて誰も思っていないだろう
俺だって出来る限りの事はしたさ、そりゃ浮気したのは良くないけど
浮気したくなるような状態を作った恵にも責任はある
「今何処にいるの?」「今何してるの?」「今日来て」「電話長かったけど誰と話してたの?」
日に何度もそんな電話されたらだれだって嫌になる
別れてからも毎日だもんな・・・・ほんと怖い女だったよ


仕事中そんな事を考えながらも週末が待ち遠しくてたまらなかった
自然にユリの事が頭を支配していった

可愛いよなユリちゃん、どんな服着てくるかな?早く会いたいな
俺のイメージを崩さないようにしないと
そういえばユリちゃんカクテル結局飲まなかったな・・・眺めてるだけで・・・


そしてその日が来た
仕事しながらすでに気持ちはユリに飛んでいた
終業と共にそのバーに向かった
待ち合わせ時間にはまだ40分もある、カウンター奥の席に入る
とりあえずビールを頼む
ドキドキしていた、落ち着こうと運ばれたビールをグイッと半分
目を閉じ胃に入る感触を感じながら深く一息つき目を開けると目の前にユリがいた!
驚いた幸一は!」と声を出した
「早く来ちゃった」微笑みながら言うユリに幸一は溺れる感覚だった
「びっくりした〜! でも早く来て良かった、待たせるの悪いし」
ユリは前回と同じ格好だった、しかし幸一にはそんな事もうどうでも良かった
変わらぬ笑み、話しかた、表情、癖 全てが可愛く見える
「何飲む?」と幸一
「同じもの」とユリ
ユリは幸一の話に常に笑った、どんな話も興味深く聞き入ってくれるユリに
その日幸一は自分では無いと思うほど喋りまくった。
ユリの表情が一変したのは、幸一がトイレから戻った時だった
急に下を向き何も言わなくなったユリに焦った幸一は聞いた
「どうか・・した?」
何も言わないユリに再度聞こうとした時初めて泣いている事に気が付いた
「・・・俺 ・・何か悪い事言っちゃったかな・・・それなら謝るけど
ユリは小さく首を振った後その答えを話した
「あのね・・・ 仕事今日やめちゃったんだ・・・
 私、会社で皆に無視されていて・・・別に問題起こしたりした訳でもないのに・・
 耐えられなくて今日やめちゃった」

「・・・そうなんだ、ひどいね皆  そんな会社辞めて正解だよ」
事情も分からない幸一だったが励ましの言葉で気を引こうと言う計算もあった

それが罠とも知らず・・・

第3章へ続く・・・
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