最終章
「もしもし・・・」
「  ・・・  」
「ユリだろ!」
「ふふふ・・・」
「一体おまえは何なんだ!!」
「アパートに居るの今」
 電話は切れた

〜〜〜〜〜
その頃警察は幸一の足取りを追って、幸一の行きつけのバーを訪れていた
「この人ここに良く来ていませんでしたか?」
その写真を見てバーテンダーは笑い出した
「この人ね〜、有名ですよこの店では、やっぱり何かしたんですか?」
「有名と言うと?」
「この人いつも1人で来るんですが、必ず飲み物2人分注文するんですよ
 で、さも向かいに誰か座っているようなそぶりで1人で喋っていましたよ
 本当おかしな人です」

「1人でですか? 女性と来た事は?」
「いえ一度も、いつも1人でしたよ帰るまで・・・」
                     〜〜〜〜〜

幸一は車を走らせた、住み慣れた町並みの路上に車を捨て
夕方の混雑に紛れアパートの前まで来た
アパートは家宅捜索された後なのだろう、立ち入り禁止のロープが張られていた
それをくぐり抜け足早に自分の部屋に入った
ユリの姿は無かった

当然か・・・家宅捜索されていたはずだ、ユリが部屋にいる訳がない

「一緒に暮らしたんだ、絶対存在していたんだ」
思い立ったようにつぶやき棚から2人で買ったマグカップ・歯ブラシを取り出した
幸一のマグカップにはコーヒーやお茶の渋がついていた
しかしもう一つはまるで新品にように真っ白だった
「歯ブラシは・・・」
幸一用の青い歯ブラシは使い癖がついていたが
ユリ用のピンクの歯ブラシには・・・値札が付いたままの状態だった

 そんなはず・・・ 毎日歯も磨いていたしこれで一緒にコーヒーを毎朝・・・

そろえた食器も長い間使われた形跡がなく、メーカーのシールが全部のお皿に
張られたままでホコリも積もっていた
全く使った形跡の無いキッチン
冷蔵庫には何だか分からないほど黒くなったパックが一杯の状態
そしてすでにカビが生え固形化した牛乳
日付を見て幸一はその場に座り込んだ
それは恵の初七日の日だった
「食事も洗濯も・・映画も何も全て・錯覚・・・幻だったというのか?」
部屋の中で響く電話
3度目のコールの後留守電になった
は〜い!幸一で〜す、今いませ〜んごめんちゃい!
また電話してね〜っ キャハハッ

その録音メッセージも・・・・幸一の声だった。


どうやってそこまで来たのか・・・気が付くと幸一は町をトボトボ歩いていた
そして突然声をかけられた

 「あなた! 何かに取憑かれていますよ」

占い師の言葉に普段なら無視する所だが今の幸一にとってはすがるようだった
黙って椅子に座り占い師の顔を見ながら・・しかし何を話せば良いか分からないでいた

 「凄い怨念を持った霊に憑かれていましたね、・・・・ん!霊ではない・・・・
  念・・・生霊ですね それもまるで嫉妬と憎悪の塊その物のような」

「生霊って霊じゃないんですか・・・」
 「人の恨みや憎悪の念は時としてそれだけで怨霊と同質のエネルギーにもなり得る
  霊と違い、その物は本来単なる念のエネルギー程度でしかないが恨みや憎しみが
  強いほど人に与える影響も大きくなる・・・とは言え本来その程度なのだ
  しかしまれに凄まじい力を見せる事が無い訳ではない
  アメリカでは生霊が普通の人として生活し殺人事件まで起こした実例も
  ある位で目撃者までいたほどだ、裁判記録にも生霊による殺人と記された実例もある」

「そんな事 実際に・・・信じられない   私に憑いているその・・」
「女性ですね、でもそれほどの力を持つには・・・元々の念を発した人は・・・」
「自殺しました、精神的な・・・実は多重人格だったんです、元の彼女でした」
「やはり・・・邪悪な性格を持った方が霊になり生霊に吸い込まれたんだ
 そうでなければこれほどの力を持つはずはない
 殆ど物体化していると言っても過言ではない!」

「実は・・・一緒に住んでいました・・と言うかそのつもりだったのですが・・・」
「なんと! 名前は」
「・・・ ユリです 黒澤ユリ」
「・・・・・黒・ユリ  クロユリか・・・クロユリと言う花の花言葉って知っておるか?」
「クロユリですか ・・・いえ 知りませんが」
「一般的には恋となっていますが 本当の花言葉は呪いと言われておる
 おまえさん浮気でもした日には一生!・・・」

突然占い師は言葉を止めた!
彼の目線は幸一では無く幸一の頭の上にあった
幸一は寒気を感じた、そして頭の上に響く声を聞いた

   あなたも 呪われたい?

占い師はその場から逃げるように立ち去った

動けないままどの位時間が経ったか・・・
突然肩をつかまれた
恐る恐るふり向いた幸一は警官に囲まれていた


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